日本学術会議ニュース・メールNo.373

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** 日本学術会議ニュース・メール ** No.373 ** 2012/12/28 
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日本学術会議
 大西隆会長からの新年のメッセージ
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新年明けましておめでとうございます。

 昨年末の総選挙で、安倍晋三内閣が誕生し、新たな気分で新年を迎えた方も多いこ
とと思います。新政権の下で、科学技術政策がさらに拡充され、科学技術立国が推進
されることを期待します。

 Future Earth(地球の未来)という国際的な研究プログラムが、日本学術会議も参
加するICSU(国際科学会議)や、ISSC(国際社会科学評議会)、国連組織等によって
準備されています。まだ全貌が見えていないのですが、地球環境問題で警鐘を鳴らし
てきた大気、海洋、陸地や地殻の地球観測に加えて、人間社会の政治、経済、文化等
も観察対象に取り込み、人間の活動と地球の変化を統合的に考察すること。地域間、
地域内等、様々なレベルでの公平性を重視しつつ世界の発展を追求すること。これら
を踏まえて、持続可能な未来を築くために、様々な主体による適切なガバナンスを構
築すること。という包括的で学際的なテーマが設定されていて、文明史的な観点から
現代工業社会を見つめ直し、新たな文明への手掛かりを掴もうという意欲的な試みで
す。日本学術会議も、Future Earthの国際的な取り組みに積極的に参加していきた
いと考えています。その理由は以下です。

 第一に、2011年3月11日の大震災によって、科学の探究とその応用が本当に人の生命
や幸福を重視して行われてきたのかに大きな疑問が投げかけられたことです。科学的
探究を中途半端なところで切り上げていないか、安全性に未だ不安があるにもかかわ
らず安易に応用されていないか、科学の応用を中止したり大きく方向転換したりする
勇気を持たなかったのではないか、という疑問に、特に日本の科学者は真剣に向き合
う責任があります。Future Earthは、人と地球の相互関係という大きな枠組みで、人
の営みを再考する大きなきっかけになります。

 第二に、日本が急速な人口減少社会に向かうことも、根本に立ち返って文明の在り
方を考える動機を与えます。総じて幸福で、不安の少ない人生を送る人が相対的に多
いと見られる日本社会では、子孫を残して同じような生活を送らせたいと思う人が多
くてもよさそうですが、現実は人口ゼロに向かって着実に進んでいるともいえます。
何がそうさせているのかを深く考えることは、これまで享受してきた物質文明、それ
を支える社会構造や価値観の全体を見直して、未来社会への革新の手掛かりを掴むこ
とに繋がります。これもFuture Earthの重要テーマです。

 第三に、Future Earthは文字通り地球規模で国際的に発想し、交流することを求め
るのですから、日本人、特に日本の科学者が必要と感じている国際化の進展を促す格
好のテーマになります。科学の成果ともいえる日本製品が世界各地で日常的に使われ
ていることに示されるように、科学を探究し、応用することは、国際的に大きな影響
を与えます。その意味で、科学は国境を越えて探究されなければならないし、特にそ
の恩恵は様々な困難に直面している地域や人により多く与えられなければならないで
しょう。日本の科学研究は、まだまだ国際的な広がりを持つ余地があり、Future 
Earthの取組がそれを促すことになればいいと思います。

 昨年末に日本で講演したICSUの Yuan Tseh Lee(李遠哲)会長は、世界人口の5割
以上を占め、経済活動の核となると見られるアジアに日本が位置すること、そのアジ
アでは、日本も含めて、自然環境を構成する一部として人間を捉えて、両者を一体と
みなす考えが育ってきたことがFuture Earthの研究を進めていく上で重要な哲学とな
っていくであろうとして、日本が積極的な役割を果たすことへの期待を表明してくれ
ました。

 こうした期待に応えるためにも、私は、日本学術会議でもFuture Earthに向けた議
論を興し、世界的な試みをリードしていきたいと思っています。


               2013年1月 第22期日本学術会議会長  大西 隆



※この会長メッセージは日本学術会議ホームぺージの以下のURLにも掲載していま
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