日本学術会議ニュース・メールNo325

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** 日本学術会議ニュース・メール ** No.325 ** 2011/11/25

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◇ 公開シンポジウム「いま、ともに、古典(伝統知)に学ぶ意義を、考える

-現代文明の危機をのりこえるために-」の開催について(ご案内)

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公開シンポジウム「いま、ともに、古典(伝統知)に学ぶ意義を、考える-

現代文明の危機をのりこえるために-」の開催について(ご案内)

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科学・技術の発展を旗頭とする近代社会の革新性は、産業革命を経て人類社会

に未曾有の物質的繁栄をもたらしてきた。しかしその一方では人口爆発、エネル

ギー枯渇の危機、環境破壊、そして倫理観の荒廃などといった現代文明の危機と

も言うべき負の遺産を招いている。折しも東日本大震災とその後の福島第一原子

力発電所の災害に見舞われ、まさに科学・技術主導のもと、商業主義的グローバ

リゼーション化の波に押し流されようとする現代日本社会のありようが、今、深

く問われている。「旧弊」を脱し、たえず「新しい」真理と、「新しい」技術を

生み出すことで活路を見出してきた科学・技術一辺倒の時代思潮の中で、世界の

諸文明における古典的価値・規範体系の伝統は、ひたすら解体へと向かっている

ように思われる。はたしてそれでよいのだろうか。

むしろ今こそ、「温故知新」の知恵が求められているように思われる。古より

伝えられてきた伝統知の集積―そこには宗教聖典やさまざまな分野で読み継がれ

てきた古典テキスト、名著が含まる―に対して、時代・社会に即応した新たな解

釈を紡ぎだす営み―それを「古典精神」と呼びたい―を通じて、伝統文化の温も

りと共同社会の絆の意味を再認識しなければならないのではないだろうか。

主体と客体を峻別し、理性を伝統的権威から切り離し、自然世界をいのちある

ものから切り離すという具合に、ものごとの境界を明確にすることによって思考

は明晰となり、諸科学の発達を促すことにはなったかもしれない。しかしこうし

たドライな分析思考の一人歩きが、個人主義、競争原理および市場原理とタッグ

を組むことによって、結果的には人と人、人と伝統・歴史、人と社会、人と自然

世界の間の溝がますます広がり、さまざまな意味で人は孤立化の危機にさらされ

ているように思われる。他者(人・社会・伝統・自然)との豊かな交わりの中で、

「いま」「ここに」「私が」生きる意味を取りもどすためには、こうした孤立し

た個人と競争の原理に立脚した科学・技術一辺倒の時代思潮とは別の地平から、

未来社会への展望を開く必要がある。

そのような展望を開くための一つの重要な視点として、上述した意味での「古

典精神」を掲げたい。すなわち、営々と続いてきた人類の営み―それは諸文明、

諸文化の栄枯盛衰を経つつも、何らかの意味で通底する価値(生きる意味)を継

承してきたはずのもの―に底流として受け継がれ、あるいは地域社会に育まれ、

蓄積されてきた伝統知、伝統文化の意味を、あらためて深く問い直すべき時では

ないかと考える。

以上の問題意識から、日本学術会議哲学委員会は、〈古典精神と未来社会分科

会〉の企画のもとに、日本哲学系諸学会連合ならびに日本宗教研究諸学会連合と

ともに、下記の次第で、公開シンポジウム「いま、ともに、古典(伝統知)に学

ぶ意義を、考える-現代文明の危機をのりこえるために-」を開催するに至った。

どうか皆様の積極的なご参加をお願い致します。

◆日時:平成23年12月3日(土)13:00~17:00

◆場所:日本学術会議講堂

◆主催:日本学術会議哲学委員会、

日本哲学系諸学会連合、日本宗教研究諸学会連合

◆プログラム:

司会

丸井 浩 (日本学術会議会員、東京大学教授/インド哲学)

小島 毅 (日本学術会議連携会員、東京大学教授/中国思想)

開会挨拶

野家 啓一(日本学術会議哲学委員会委員長、東北大学理事/哲学)

報 告

手島 勲矢(日本学術会議連携会員、関西大学非常勤講師/ユダヤ思想)

「対話する科学のための二つの名前:中世ユダヤの伝統知から」

三中 信宏(農業環境技術研究所上席研究員/東京大学教授/進化生物学)

「科学的思考と民俗知識体系の共存:進化するサイエンスの源を振り返る」

岡田 真美子(日本学術会議連携会員、兵庫県立大学教授/

環境宗教学・地域ネットワーク論)

「地域ネットワークに生きる伝承知の重み」

服部 英二(地球システム・倫理学会会長/哲学・比較文明学)

「現代文明の危機と伝統知」

討議者(ディスカッサント)のコメント:全体討論に向けて

中島 隆博(日本学術会議連携会員、東京大学准教授/中国思想)

村澤 真保呂(龍谷大学准教授/社会思想史)

全体討議

閉会挨拶

西村 清和(日本学術会議哲学委員会副委員長、東京大学教授/美学)

詳細については、以下のURLを御覧ください。

http://www.scj.go.jp/ja/event/pdf/140-s-1-1.pdf

◆参加無料、事前登録不要

◆問い合わせ先:日本宗教研究諸学会連合事務局 jfssr20084@gmail.com

日本学術会議事務局第一部担当 小林(TEL:03-3403-5706)

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